病気が増えたんじゃなくて、病気を増やしたのかな?
27
(火)
09月
【 エッセイ 】
2011年7月22・23日、佐賀で『第33回日本アルコール関連問題学会』が開催された。
私は、「医療行為への正当な評価」と題する分化会を担当、司会、話題提供を務めた。
やはり、「重度アルコール依存症入院管理加算」について、多くの時間が割かれた。
(2010年3月15日、3月29日と、その時のブログで「本当はよく分かってないのに、分かったつもりで制度化されている依存症の事」、「...、その続き」で「重度アルコール依存症入院管理加算」ついて紹介)
ここで話は少しそれるが、今回のアルコール関連問題学会と時を同じにして、厚生労働省は心筋梗塞、脳卒中、癌、糖尿病に次いで、精神科疾患を5大疾病にした。先の4大疾病に次いで、精神科疾患を重大な疾患に指定したのである。
その患者数は、323万人である。他の4疾病で最も多い糖尿病でも250万である。新たに追加された疾病が、これまでの4疾病よりもその患者数がはるかに多い。何か不自然である。一般的に重要な対策などを要する事項で、先に幾つかある対策事項に次いで加えられる事項は、本来、先にあげられている事項の件数とほぼ同数に達したことで認定されるのが通常である。
マスコミ各紙で報道されているこの5大疾病に関する疾病数の推移を表した表を見てみると、精神科疾患が急激な伸びを見せ始めたのは、西暦2000年になろうかとする時である。
そんな1998年、長崎では、長崎市立市民病院の精神科が「偏見、差別を排除し、気軽に受診を!」といったキャッチフレーズで心療内科に診療科名を変更した。もちろんそこで診療するのは精神科医である。その後、雨後の竹の子のように、長崎市を中心に県内で心療内科のクリニックが開設された。それは、全国的なものであった。確かに一般の方々は気軽に受診できると、歓迎されたようである。
古今東西、統合失調症の発症は100人に1人と言われ続けている。また、認知症も増加はしているが、大幅な増加は我々団塊の世代が、もっと老いてからになるであろう。となると、精神科医が第1標榜する心療内科が、この323万人に大きく寄与しているのは間違いなさそうである。そこには、統合失調症、定型うつ病、認知症の患者さん方が多く通院、とくに統合失調症の患者さんは近年、非定型精神病薬の発売も相まって、多くの方々が入院を必要とせず、街で暮らせるようになっている。喜ばしい...。
しかし、この学会でも話題となりつつあるアルコール依存症(他の依存症)と「うつ病、強迫性障害、社交不安障害、人格障害」といったその他の精神科疾患との重複障害への理解と治療のすすめ方を身につけて、心療内科クリニックを標榜、開業されている精神科医はごくわずかであると言っていいだろう。そのための臨床現場の実践的教育環境作りは必須である。そして、ここで、「重度アルコール依存症入院管理加算」の"重度"に対する評価をしっかり行った上で、他のアディクション、重複障害、特定不能の障害への精神科医療サービスのあり方と、そのための「医療行為への正当な評価」の分析が急務である。
何となれば、今、そんな心療内科は、その多くがビル診療所であるため夜間は無人だ。不安、焦燥感に支配されたアルコール関連問題、あるいは重複障害者などの、夜間帯の大量飲酒と大量服薬による意識障害、そしてリストカット、さらに自殺企図への対応に救急隊、一般救急病院が振り回され、悲鳴を上げ、消耗している。
今回のアルコール関連問題学会における「医療行為への正当な表価」、それは、アルコール関連問題に限ったことではない。今度5大疾病になった精神科疾患の323万人を治療する上での「医療行為への正当な評価」と言ってもいい。とにかく"重度"の評価を何とかしよう。
この323万人といった患者数を厚生労働省はどう分析しているのだろうか。
5大疾病の一つになった精神科疾患(323万人)にとって大事な対策として、私が提案したいことは、以下の3つである。
1)気分障害・アディクション(重複障害も含む)の重度評価とその診断と治療技術
2)任意契約(任意入院を含めた)における治療のすすめ方とそのためのチーム医療
3)精神科医が第一標榜する心療内科クリニックの位置付けと役割