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(...)について

27

(月)

05月

エッセイ

これから紹介する【...】の文章には、(...)が多い。

【『精神科病院の構造改革は不可能か』
 日本精神病院協会誌(現:日本精神科病院協会誌) 
 平成10年(1998年)6月号・牛島定信著:東京慈恵会医科大学精神科教授(現:日本精神衛生協会理事長)より以下抜粋。

『...ここで特に注目してほしいことは、人格障害や思春期患者たちがもたらしている行動障害、あるいはうつ病や神経症水準の患者たち、さらには心身症への対応という現在の精神医療に対する社会的ニーズである。《中略》分裂病(統合失調症)と痴呆(認知症)患者の入院だけで事足れりとするならば、やはり従来の「精神病院」に過ぎないのではないか。
《中略》慢性分裂病と痴呆だけを担当すればよいという雰囲気を作ってしまっては、わが国の精神保健を担うということにはならないのではないかと思うのである。こうした(マイナー)の疾患にも対応する姿勢はもっておくべきではないか...』と。】

まず、これは平成10年(1998年)に書かれたものである。ここでも(1998年)と(...)なっている。この1998年という年は、過去の私のブログ「心の病が増えたんじゃなくて、増やしたのかな?:2012年6月18日」でも紹介したが、精神科疾患が5大疾病の1つとなるに至るターニングポイントの年である<図1>。

20130527_1.JPG

また、(現:精神科病院協会誌)も当時、精神病院協会が私にはよく分からないが、(科)を加えることにした。その後、(科)を加えることで、全国の精神科病院で、【...】のタイトルにある「精神科病院の構造改革」なるものが何かなされたのだろうか。これも私は分からない。

病名についてだが、(統合失調症)に関しては、名称変更で本人、家族への気遣いがなくなり、告知が容易になったし、この病に対するイメージも変わったと実感している。
次に、(認知症)だが、認知とは、認識・感知・分かる、などといった意味がある。「子供を認知する」といった使われ方もするし、統合失調症にも認知障害がみられる場合があり、紛らわしいのは否めない。まぁ、それはそれで受け入れていかねばならないだろう。

ここでマイナーにも()を付けてみた。マイナーとは、この文中では、先に述べられている「人格障害や思春期患者たちがもたらしている行動障害、あるいはうつ病や神経症水準の患者たち、さらには心身症...」のことである。
ここで、西脇病院における開院当時と最近の新規受診者500名を比較してみた<図2>。

20130527_2.JPG

明らかに最近の新規受診の患者では、牛島先生が指摘される(マイナー)はメジャーになっているではないか。
そう、疾病構造の変化が起きているのである。
(科)を付ければ解決する問題ではない。病名を変えるだけでも如何ともしがたい。

牛島定信先生は東京慈恵会医科大学教授から(日本精神衛生協会理事長)に変わっておられる。これには2つの理由がある。一つは定年という制度があるからだ。もう一つは牛島先生に今もこれからも日本の精神衛生≪メンタルヘルス≫についてご指導を仰ぎたいがために、大学退官後も日本精神衛生協会の要職に就いていただいているからである。そういった牛島先生が(1998年)というある意味象徴的な年に語られた『精神科病院の構造改革は不可能か』は重いと言わざるをえない。

追記:ここで誤解なさらないでいただきたい。牛島先生は、『精神科病院の構造改革は不可能か』のなかで、統合失調症、認知症の精神科病院における治療の必要性も十分に語っておられる。私が勝手に割愛しただけだ。